不倫慰謝料請求が無効になる!?|3年の時効と時効を止める方法
愛するパートナーが不倫をしていたことを知ったら、多くの人は大きな精神的ショックを受けます。不倫は不法行為にあたりますので、不倫をした配偶者(法的には有責配偶者といいます)にも不倫相手にも、不法行為に基づく損害賠償金を請求することができます。
もちろん、慰謝料の支払いを受けるだけで、不倫によって請けた心の傷はすべて埋められるものではありませんが、けじめをつけるという意味でも、離婚した場合の生活を考えるという意味でも、不倫慰謝料はきっちりと回収したいところです。
ところで、不倫慰謝料請求権は永久に行使できるものではなく、消滅時効があることをご存知でしょうか?時効が完成してしまうと請求権が消滅し、不倫慰謝料を請求できなくなる可能性があります。
この記事では、不倫慰謝料の時効とはどういうものか、除斥期間とはなにか、時効を止める方法はあるのかということについてご説明します。
このコラムの目次
1.慰謝料請求権の時効とは
(1) 不倫慰謝料請求権とは
結婚している男女は、お互いに対して、相手以外の異性と肉体関係をもたないという貞操義務を有しています。不倫はこの貞操義務に反することですので、民法上の不法行為にあたります。被害者である側の配偶者は、有責配偶者に対して慰謝料請求権をもつということになるのです。
また、相手が既婚であることを知りながら(または気づいて当然と思われる状況下で)、自分の意志で既婚者と肉体関係をもった不倫相手は、共同不法行為を行ったということになりますので、被害者は不倫相手にも慰謝料請求権をもつことになります。
民法709条は、故意過失により他人の生命・身体・財産に損害を与えた者はその損害を賠償する責任を負うと規定しており、民法710条は、損害とは財産的損害に限らないと定めています。不倫をされた被害者は精神的に大きなダメージを負いますので、不倫をした有責配偶者も不倫相手もこれを賠償しなければならないのです。
被害者は、有責配偶者と不倫相手のどちらに対しても慰謝料を満額で行使することができ、請求された側は「自分ではなく相手が悪いからそちらに先に請求してほしい」というような反論は基本的にはできません。そのため、被害者は自分の選択で、どちらに対しても慰謝料を請求することもできますし、どちらか一方だけを選んで請求することもできます。
有責配偶者と婚姻を継続する場合は、生計をひとつにしている有責配偶者から慰謝料をもらっても実質意味がないですので、不倫相手にのみ請求される方が多いようです。
(2) 消滅時効とは
法律上の権利には、一定期間権利者がこれを行使しないと消滅してしまうものが多くあります。これを「消滅時効」といいます。
消滅時効が存在する理由は、権利の上に眠る者は法的な保護に値しない、というローマ法の考え方に由来するものです。権利の上に眠るという意味は、せっかく法律上の権利があっても、放置したままにしておくことは自助努力にかけるという意味になります。
消滅時効は民法上で期間が定められており、不法行為による損害賠償請求権は、被害者が損害および加害者を知ったときから3年間で消滅するとされています。
不倫は不法行為のひとつと位置づけられますので、不倫慰謝料請求権もこの定めにより、被害者が不倫の事実と不倫当事者を知ったときから3年間で時効が消滅します。
(3) 不倫慰謝料の時効
有責配偶者に対する請求権の消滅時効は、被害者である配偶者が不倫の事実を知ったときから3年間ということになります。加害者の特定は自明だからです。
不倫慰謝料は、被害者が受けた精神的苦痛を填補するものですので、一部については、不倫の事実を知ったとき、不倫により婚姻が破綻したとき、不倫により離婚したときと、時点を追って起算点が変わって進行していきます。
不倫相手に対する不倫慰謝料請求権の時効は、加害者の特定、つまり不倫相手の氏名や住所などで請求先を特定してからスタートしますので、有責配偶者に対する請求の時効完成と時期がずれることもありえます。
2.時効の援用
消滅時効が完成したとしても、時効の完成によって利益を受ける当事者が援用しない限りは、不倫慰謝料請求権は消滅しません。
援用とは、ひらたくいうと主張するということで、具体的には、加害者(有責配偶者と不倫相手それぞれ)は、請求者である被害者に対して、「時効が完成した、時効制度を利用する」という旨を伝えるということです。
当事者に援用されてはじめて消滅時効が完成しますので、例えば、加害者が時効制度を知らなかったり、贖罪の意思があって時効を使わないで慰謝料を払うという意思があったりして、意図的または意識なく時効援用をしなかった場合は、不倫慰謝料請求権は消滅しないのです。
例えば、不倫慰謝料請求訴訟中に時効期間が経過していたとしても、裁判所が「時効が完成したので、不倫慰謝料請求は認めません」という判断を勝手にすることはなく、当事者からの主張があれば初めて論点にあがるということになります。
3.除斥期間に注意
3年間の消滅時効とは別に、法律上「除斥期間」というものが定められています。不倫が始まったときから20年が経つと、不倫慰謝料請求権は消滅するというものです。
除斥期間と消滅時効の大きな違いは、除斥期間は当事者が援用するしないにかかわらず、20年間経てば強制的に完成するということです。
民法は、個人の利益調整をはかり、全体として世の中の安定や調和を実現するためにつくられています。そのため、長く続いてきた事実関係については、無理にこれを壊さず尊重するという特徴があるのです。
例えば、仮に除斥期間経過後に、被害者がやはり請求したいという気持ちになり、不倫慰謝料請求訴訟が提起されたとしても、裁判所は除斥期間により慰謝料請求権は消滅しているという判断のもと、これを棄却するということになります。
4.時効を止める方法
上述の通り除斥期間を止める方法はありませんが、時効については進行をストップする方法があります。消滅時効がもうすぐ完成しそうだけれど、慰謝料を請求したいという方は、すぐに対策をとるべきでしょう。
時効を止める方法は大きく分けると2つあり、1つは裁判所に対して不倫慰謝料請求を求める訴訟を提起する方法、もう1つは加害者に内容証明等を送る催告という方法です。
前者の場合、訴訟を提起した時点で消滅時効のカウントはゼロに戻ります。訴訟という法律行為をしているわけですので、請求者は権利の上に眠っているわけではなく、権利を行使する意思を示しているためです。
後者の催告という方法は、内容証明など記録が残る郵便で慰謝料を請求することで、時効期間の進行が一旦6ヶ月停止します。この間に示談交渉で決着をつけるという時間が稼げるわけです。
また、この6ヶ月という期間内に訴訟を提起すると、やはり消滅時効はゼロに戻ることになります。いきなりの訴訟が躊躇われるという場合や、示談交渉に見込みがある場合に検討の余地があるでしょう。
5.不倫慰謝料請求はお早めに弁護士にご相談ください
不倫慰謝料請求権は、消滅時効にかかったり除斥期間が経過したりすると消滅してしまい、もはや請求をすることができなくなる可能性があります。
そのため、被害者としては、不倫の証拠が揃ったらなるべく早いタイミングで不倫慰謝料分野に実績のある弁護士に相談の上、対策をとることがおすすめです。
また、証拠が古くなると、現在の状態ではないと主張されたり、時効経過を疑われたりする可能性もありますので、時効完成までにまだ少し時間があったとしても、弁護士としては迅速な対応をおすすめします
不倫相手や配偶者に不倫慰謝料請求をしたいとお考えの方は、どうぞお早めに泉総合法律事務所の初回無料相談をご利用ください。
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