弁護士に依頼して交通事故紛争処理センターを利用すべきケース
交通事故の損害賠償請求では、いきなり裁判とはなりません。弁護士に依頼しても、基本的には保険会社との示談交渉で示談金の増額を試みることから始まります。
ところが、
- 争点が多すぎる
- 請求が認められるか危うい損害がある
- あまりに強硬すぎる態度をとってまるで話にならない
といった問題が生じ、示談交渉が進まなくなってしまうことがあります。
こんなとき、交通事故紛争処理センターは活用できる機関です。
裁判所とは異なるADR(裁判外紛争処理機関)であり、裁判官ではなく、弁護士や学者などにより保険会社との争いを無料で仲介してもらえます。
上記のような事情から保険会社との交渉が煮詰まったときには、弁護士に示談交渉の依頼をして下準備をしてから交通事故紛争処理センターを利用することで、比較的早く、柔軟な解決ができる可能性があるのです。
ここでは、弁護士に依頼して交通事故紛争処理センターを利用すべきケースを解説します。
1.争点が多いケース
交通事故の損害賠償請求では、治療費や慰謝料、休業損害など、損害がその性質ごとに細かく項目分けされています。
損害賠償金の相場や基準、目安はありますが、それでも、被害者様の具体的な事情を考えなければ、現実の賠償金の金額は計算できません。
保険会社は営利団体ですから、できうる限り賠償金を減らせる事情を見つけ出して支払いを減らそうとしてきます。
争いになっている損害項目が多ければ多いほど、示談交渉はこじれてしまいます。
裁判に持ち込んだとしても、時間がかかってしまいますし弁護士費用がかさんでしまいます。
自賠責や被害者様が加入している保険からの支払いがあるでしょうが、交通事故による生活への支障を回復するには、できる限り早く損害賠償金を手に入れることも大切です。
交通事故紛争処理センターの和解あっせん手続では、基本的に月1回の期日を3回ほどで示談交渉をまとめることができます。交通事故紛争処理センターの目的の一つに、迅速な紛争の解決があるからです。
和解のあっせんがまとまらなければ、審査会による審査にかけてもらい、保険会社が拒否できない裁定による判断をしてもらうこともできます。
もっとも、その際にはあらかじめ個人的に依頼した弁護士に損害賠償請求の内容を整理して保険会社との争点を明確にしたうえで、被害者様に有利な事情を洗い出しておくことが重要です。
交通事故紛争処理センターは中立の立場です。保険会社と交渉するうえでどのように話を持っていけばいいのか、どのように主張したほうが有利なのかまで具体的かつ丁寧にサポートしてくれるわけではありません。
ですから、交通事故紛争処理センターを利用するにしても、その前に弁護士に依頼をして示談交渉の話の整理をしておくべきなのです。
2.裁判で勝てるか怪しいケース
保険会社との争いがたった一つの問題点に絞られている場合でも、示談交渉が動かなくなってしまうことがあります。
たとえば、むち打ちの損害賠償金です。
むち打ちは症状があいまいですし、治療中にだんだんと痛みやしびれと言った症状が治っていきますから、治療期間後半の休業損害はいらないのではないかと言われてしまうのです。
さらに、主婦(夫)など、働いて収入を得ているわけではないが、家族のために家事をしている家事従事者となると、損害の証明がより難しくなります。
このような場合、弁護士に依頼しても保険会社が徹底して支払いを渋ることが珍しくないのです。
交通事故紛争処理センターは、
- 似たようなケースでこれまでに裁判所が損害賠償請求を認めている
- 被害者様の具体的な事情の下で、裁判所が損害賠償請求を認めるとは限らない
このような微妙な損害項目について、裁判所よりも損害賠償請求を認める判断をする傾向があります。
裁判所に比べると、法律的な厳格さよりも、柔軟で迅速な紛争解決を優先するからです。
なお正当な金額の損害賠償金を得るには、その症状が事故によるものであり、確かに存在したという証拠が必要不可欠です。
どれだけの証拠が必要か。それは相談を受けた弁護士にしか見通しは立てられません。
3.相手と話し合いにならないケース
交通事故の損害賠償請求では、上記のように、様々な損害項目において、法律的な判断や事実関係について争いが生じがちですが、基本的な相場は出来上がっています。
ところが、保険会社全体の傾向、保険会社の担当者や保険会社に委任された弁護士の「姿勢」「人柄」「態度」次第では、制度の常識からかけ離れた理不尽な主張をしてくることがあります。
弁護士に依頼しても、相手が交渉に応じないようなケースではいつまでも交渉が進みません。一方で、裁判にしても徹底抗戦されてしまうでしょう。
このようなケースでも、中立的立ち位置故に交通事故紛争処理センターは役に立つことがあります。
センターで和解をあっせんするのは弁護士です。審査会の審査員も弁護士や元裁判官、学者などが担当しています。
第三者として示談交渉が迅速に解決するように働きかけるのです。
センターの判断は被害者様の立場に立たないとはいえ、逆に言えば、保険会社側の明らかに不適切な対応を修正してもくれるのです。
そして、センターが出した判断については、保険会社側は拘束されます。
4.まとめ
示談交渉は、事情次第では話が進まなくなってしまうことがあります。
かといって裁判となると、時間や弁護士費用が掛かるリスクがありますし、証拠や法律的な主張の説得力については厳しく判断されますから、思うように損害賠償を認めてもらえないかもしれません。
そんなときは、弁護士に依頼したうえで、交通事故紛争処理センターを利用した解決を検討してみましょう。
- 多くの争点や複雑な事実関係を整理して裁判より早くに解決できる
- 裁判所で認められないリスクがある損害についても示談金が支払われる可能性がある
- 相場を無視した対応をする保険会社との示談ができるようになる
そのまま示談交渉を進めた場合や、裁判に打って出た場合よりも、柔軟で迅速な解決が期待できます。
交通事故紛争処理センターでは相談担当弁護士との法律相談も無料で受けることができますが、繰り返しますがセンターの弁護士は中立の立場です。
あなたの味方となる弁護士を見つけるために、まずは法律事務所の弁護士に相談しましょう。
泉総合法律事務所は、交通事故の初回相談が無料となっております。これまで多数の後遺症に苦しむ被害者様の示談交渉をお手伝いしてまいりました。皆様のご来訪をお待ちしております
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