妻や子供へのDVが通報された…。この先どうなる?
普段から口喧嘩が絶えず、夫婦喧嘩が激しくなってしまった結果、妻や子供に対し暴力を振るってしまうと、DV(ドメスティックバイオレンス)として被害届を提出されてしまうかもしれません。
[参考記事]
「被害届を提出された!」刑事事件にどう影響するのか?
また、被害者(妻や子供)本人が暴力を訴えずとも、近所や病院、学校から警察に通報されてしまうことは十分にありえます。
DVの場合は、暴行罪、傷害罪として逮捕されるのが一般的です。
では、これにより、どのような刑罰が科されるのでしょうか?刑罰を免れる手段はあるのでしょうか?
今回は、「DVで通報された場合の罪、逮捕後の流れ、逮捕後の注意点」などをご説明します。
このコラムの目次
1.DV(家庭内暴力)の罪
DV(ドメスティックバイオレンス)とは「家庭内暴力」を指します。
まずは、 DVで問われる罪についてご説明します。
(1) 暴行罪(怪我がない場合)
DVで成立する犯罪のうち、最初に検討すべきは、暴行罪となります。
暴行罪は刑法208条に規定される刑罰であり、「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。」と規定しています。
条文の規定からも分かる通り、「暴行したが傷害とならなかった」場合に問われる罪となります。
もっと簡単にいうと、怪我にならない程度の暴行であった場合にはこの条文が適用されることになります。
実務上は、軽度のアザなどは、暴行罪の範囲内と考えられています。
(2) 傷害罪(怪我をした場合)
刑法204条は「人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」と規定しています。これが傷害罪です。
傷害とは、人の生理的機能に障害を来した場合を指し、切り傷やアザ、骨折、臓器への障害などさまざまな症状を指します。
被害者がひどい怪我を負った場合には、傷害罪が適用されて量刑が重くなることや、執行猶予がつかないで実刑となることもあります。
2.DVで逮捕された後の流れ
家庭内の揉め事に関しては、基本的に警察は知る由もありません。
そのため、DVが表沙汰にならない限りは、逮捕ということは通常考えられないでしょう。
しかし、以下のようなケースには、DVで逮捕される可能性があります。
- 被害者が病院に運ばれる
- 近所の人・学校が警察等に通報する
- 配偶者が被害届を提出する
DVは加害者と被害者が同居しており、再発の恐れがあるため、加害者が逮捕されるのが一般的です。実際に逮捕されてしまったら、その後の刑事手続きの一般的な流れはどうなるのでしょうか?
具体的な流れとしては、以下の通りに進んでいきます。
- 逮捕後の取り調べ
- 検察への送致(逮捕から48時間以内)
- 勾留請求の可否(送致から24時間以内)
- 勾留、もしくは釈放
- 起訴・不起訴決定
- 裁判開始
- 判決(罰金・執行猶予・刑事施設へ収容など)
逮捕された場合は、警察署内にて取り調べが開始されます。取り調べでは、暴行の件について詳しく聞かれることになるでしょう。
(このとき、家族と会話をすることはできず、面会できるのは弁護士のみです。)
逮捕から48時間以内には、検察に送致され、検察でも同様にいくつか質問が行われます。
その後、24時間以内に裁判官の勾留質問が行われて、勾留が行われるかどうかが決定します。
逃亡や証拠隠滅の可能性がない場合には釈放されることになりますが、DVによる逮捕の場合、釈放したら被害者のいる自宅へ戻り再度暴行が行われる危険があるため、勾留される可能性が高いと言えます。
勾留が決定すると、原則として10日間、長い場合で最大20日間、勾留施設から出ることはできません。
勾留中(または釈放後の在宅事件の最中)に、起訴・不起訴が検察にて判断されます。
夫婦喧嘩で軽い怪我をしたという程度で、被害者も許しており、もう二度と罪を犯さないという反省が見えるのであれば、不起訴になるケースも多いでしょう。
不起訴が決まれば釈放ですが、起訴が決まればこの後も被告人勾留が続く可能性があります。
なお、起訴されると、ほぼ確実に有罪判決となり、前科がつきます。執行猶予か罰金の判決がでない限りは、刑事施設へと収容されることになります。
3.DVで逮捕されてしまった場合の注意点
DVで逮捕されてしまった場合、取り調べ中の言動には要注意です。
DVで逮捕された場合には、暴力事犯として厳しく取り調べが行われることもあります。
特に女性や子供など弱者に対する暴力であり、怪我の程度が重い場合には、取り調べも力が入る可能性は否定できません。
DVの事実があり、反省している場合は、「素直に協力する」ことが大切です。できるだけ真摯に答え、反省している旨を伝えるようにしましょう。
しかし、取調べでもし警察からの事実確認で間違っていることがあれば、訂正してもらうべきです。
自分がやっていないことを認めてしまうと後で撤回するのは難しくなります。
撤回しても、初期の自白と矛盾することから供述に信憑性がないとして、裁判で退けられてしまう可能性もあります。
捜査官からは暴行の態様、故意について多くを聞かれることになりますが、内容に相違がある場合は否定するようにしましょう。
虚偽の事実でも一度応じてしまうと、のちの起訴・不起訴の処分や量刑に影響してくる可能性があります。
4.DVで逮捕されそうなら弁護士に相談を
DVは大きな社会問題ともなっています。警察に通報されても注意をされるだけ、と甘く見てはいけません。
DVは、被害者の告訴がなくとも立件できる犯罪です。一度公になってしまうと、逮捕される・起訴される可能性は否定できません。
逮捕や将来に不安があるなら、できるだけ早い段階で弁護士に相談してください。
逮捕されそうな状況の場合は、取り調べ時のアドバイスをしたり、被害者と示談を行ったりするなどの弁護活動を行うこともできます。
また、逮捕後であっても、できるだけ早く釈放してもらうことが大切です。長い勾留生活になると、会社や仕事など実生活への影響は避けられません。
できれば、逮捕後はすぐに弁護士に依頼し、勾留請求前に弁護活動ができるようにすべきです(勾留中でも不起訴に向けた活動ができます)。
起訴されてしまった場合は、保釈請求をした上で、執行猶予になる・量刑が軽くなるよう尽力します。
早い段階で弁護士に依頼すれば、できることはたくさんあります。
妻や子供への暴行・傷害で逮捕されそうな方、されてしまった方は、お早めに弁護士へご相談ください。
DV被害を受けた家族が警察に通報したけれど、これほど大事になるとは思っていなかったというケースも見受けられます。とにかく「夫を釈放して欲しい」場合、家族になにができるでしょうか?
被害届を提出した場合、家族の告訴がなくとも警察は捜査を開始して続けることができます。逮捕されそのまま勾留されてしまったというケースも少なくありません。
できるだけ早く釈放を望むなら、すぐに弁護士に相談してください。刑事手続きに慣れた弁護士であれば、釈放するための弁護活動を開始してくれます。
家族としては、被害届を取り下げる、情状酌量を訴えるなどの措置が考えられます。
もっとも、夫の釈放後もDVが止まる保証はどこにもありません。必要であるなら、実家に帰る、配偶者暴力支援センターに相談するなどの行動を起こし、まずはご自身と子供の危険を回避してください。
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