家族が強制性交等罪で逮捕!?家族がするべきこととは
強制性交等罪で逮捕された方の家族は、逮捕の連絡を聞いて当然困惑してしまうでしょう。
「強制性交等罪とはどういう犯罪なのか」「逮捕された後はどうなるのか」など、多くのことが気掛かりになると思います。
では、家族としては、被疑者のために何ができるのでしょうか。そして、どう対応したらよいのでしょうか。
以下においては、強制性交等罪の刑罰や、強制性交等罪で逮捕された後の流れ、そして起訴は免れないのかなどについて確認しておきましょう。
また、最後に、被害者との示談と被害者の処罰感情の緩和の必要性がいかに重要かを解説いたしますので、どうぞご覧ください。
1.強制性交等罪とは?
強制性交等罪は、次の二点により成立します(刑法177条)。
- 13歳以上の者に対し、相手の抵抗を著しく困難ならしめる程度の暴行又は脅迫を用いて、性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」)をすること
- 13歳未満の者に対しては、単に性交等をすること。
この場合、5年以上の有期懲役(なお、長期=最高刑は20年)に処せられます。
ちなみに、上記の罪名、行為内容及び刑罰は、平成29年の刑法改正により改められたものです。
改正点は次の通りです。
- 従来の強姦罪が強制性交等罪に改められ、被害者の性別を問わなくなったため、女性のみならず男性も被害者に含まれること(そのため、加害者も男性に限られなくなりました)
- 性交(姦淫)に加え肛門性交及び口腔性交をも対象とすること
- 法定刑の下限が懲役3年から懲役5年に引き上げられたこと
- 上記改正により、強制性交等罪は非親告罪になったこと
このように、刑法改正により被害者の意思に関わらず捜査、そして起訴ができるようになり、さらに、法定刑が引き上げられた結果、酌量減軽(刑法66条)がなされない限り、懲役刑に執行猶予が付かないことになりました。
性犯罪について厳罰化が図られているのです。
2.強制性交等罪で逮捕された後の流れ
被疑者は、逮捕されますと、最大72時間自由を制限されます。
そして、警察が逮捕を行った通常の場合は、逮捕から48時間以内に検察官に送致されます。
検察官は、被疑者を受け取ってから24時間以内に裁判官に対し、より長期の身体拘束を求める勾留の請求をします。
裁判官は、検察官から勾留の請求がありますと、勾留質問を行って、その当否を審査します。
罪を犯した疑いがあり、住居不定、罪証隠滅のおそれ又は逃亡のおそれのいずれかに当たり、捜査を進める上で身柄の拘束が必要なときには、裁判官は被疑者の勾留を認めることになっています。
なお、勾留期間は原則10日間ですが、事案が複雑困難、共犯事件、証拠収集が遅延又は困難、釈放すれば被疑者が罪証隠滅を図るおそれがあるなど、やむを得ない事由がある場合には、更に10日以内の延長が認められることもあります。
さらに、勾留されたままの状態で起訴された場合には、勾留そのものが取り消されるか、又は保釈が認められない限り、身体拘束が続くことになります。
3.強制性交等罪を犯した被疑者の逮捕勾留
平成30年版犯罪白書によりますと、平成29年の強制性交等罪(下記においては、上記改正前の「強姦罪」を含む)の身柄拘束状況は、次のとおりです。
総数(A) |
逮捕されない者 |
逮捕後釈放 |
身柄付送致(B) |
検察庁で逮捕(C) |
身柄率(B+C)÷A |
---|---|---|---|---|---|
1,154 |
480(41.6%) |
2(0.17%) |
671(58.1%) |
1(0.08%) |
58.2% |
認容(D) |
却下(E) |
勾留請求率(D+E)÷(B+C) |
---|---|---|
661 |
1 |
98.5% |
上記の数字からすれば、逮捕率は58.4%(674人)です。
更に、勾留請求前の段階で12人が釈放され、結局、662人が勾留請求されました。
勾留請求に対する裁判所の判断は、1人却下、661人認容となっています。
そうしますと総数1,154人のうち、勾留となったのは661人で、勾留率は57.3%となります。
このように見てきますと、逮捕されればほぼ勾留されるとはいえ、強制性交等罪の場合でさえ、逮捕されない者が41.6%に上っているのです。
法文上、逮捕されないのは、明らかに逮捕の必要がないと認められるとき(刑訴法199条2項ただし書)ですが、刑訴規則143条の3によりますと、被疑者に逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれがない場合がこれに当たることになります。
では、強制性交等罪で逮捕されないのは、具体的にどのような場合が考えられるのでしょう。
逮捕されない一般的な例には、次のようなものがあります。
- 被疑者が犯行を認めて捜査に協力している
- 被疑者が自首している
- 犯行態様が悪質でない
- 被疑者に特段の前科がない
- 被疑者が定職に就いている
- 示談が成立しているかその見込みが確実である
- 被害者の承諾が存在し犯罪とならない可能性がある
- 被害者が被害届を提出していない
- 被害者が被害届を取り下げている
- 被害者に処罰を求める意思がないか緩和している
- 被害者が行方不明、音信不通等、その意向が確認できない
- 犯行を裏付ける証拠がないか不十分であるなど
これらの事情のうち一つあるいは複数の要因がある場合には、逮捕されない可能性があるといえます。
しかし、先述の通り、性犯罪につきましては近年厳罰化が図られています。
上記の傾向よりも高確率で逮捕・勾留されてしまう可能性はありますので、甘く見てはいけません。
4.強制性交等罪の起訴率
犯罪白書によりますと、平成29年の強制性交等罪の検察庁の終局処理人員、不起訴率、起訴率、起訴猶予率は次のとおりです。
総数 |
起訴人(A)員 |
不起訴人員(B) |
起訴猶予人員(C) |
その他の不起訴 |
家裁送致 |
---|---|---|---|---|---|
1,153 |
354 |
730 |
109 |
621 |
69 |
不起訴率 B÷(A+B) |
起訴率 A÷(A+B) |
起訴猶予率 C÷(A+C) |
---|---|---|
67.3% |
32.7% |
23.5% |
上記の数字からすれば、不起訴率は高いことが分かります。
その理由は、一般的な例を参考にして考えてみますと、次のような場合、起訴が見送られ、不起訴となる可能性が高いものと思われます。
- 犯行の存在や被疑者と犯人の同一性を裏付ける証拠がない場合の「嫌疑なし」
- 被害者の承諾の可能性があるか犯行を裏付ける証拠が不十分な場合の「嫌疑不十分」、
- 特段の前科がなく、犯行を認めていて、犯行態様が悪質でなく、示談が成立し、被害者の処罰感情が緩和している場合の「起訴猶予」
実際の不起訴処分のほとんどは、起訴猶予に属するものです。つまり犯行後の活動によって能動的に得られたものと言えます。
強制性交等罪は非親告罪です。
示談が成立したからといって、不起訴になるわけではありません。
しかし、強制性交等罪を犯した場合であっても、適切な対処をすることで、数字上は必ずしも起訴されるとは限らないことが分かります。
5.被害者との示談・処罰感情の緩和の必要性
被害者と示談が成立し、被害者の処罰感情が緩和された場合には、逮捕を免れたり、不起訴で終わったりする事例があります。
そして、そのことは、公判段階でもいえることです。
示談が成立し、被害者の処罰感情が緩和されれば、もちろん事案によるとはいえ、執行猶予となる可能性も出てきます。また、実刑であっても刑期が軽減されることにつながっているのです。
裁判官の間では、示談金を受け取ることによって、被害者の処罰感情が緩和されたか否か(被疑者を許すことはできないものの、被疑者の誠意を認めて、厳罰までは求めない場合も含まれます)を重視すべきであるという考え方が強いです。
(要するに、被害者が厳罰を求めている場合には、被疑者に有利な処分とはならないであろうということなのです。)
では、被害者と示談をするためには、どうしたらよいのでしょうか。
示談交渉をしたくても、通常は、被疑者やその家族は被害者の連絡先を知りませんし、警察や検察官も、まず被害者の連絡先や氏名を教えてくれることはありません。
そのため、どうしても弁護士の手を借りる必要があります。
弁護士が相手であれば、警察や検察官も、被害者が同意をした場合、被害者の連絡先や氏名を弁護士に開示してくれるからです。
その開示が得られれば、刑事弁護を依頼した弁護士が、被害者との示談交渉に当たることになります。
もちろん、被害者が未成年の場合には、示談交渉の相手は被害者の保護者である両親ということになります。
弁護士は、未成年である被害者の心情にも最大限配慮して、示談交渉に当たります。
示談交渉では、被疑者の真摯な反省と誠意ある謝罪の気持ちを、被害者側に受け入れてもらう必要があります。
これらを受け入れてもらえれば、被害者側との示談の成立、そして被害者の処罰感情の緩和の可能性が高くなります。
性犯罪に対する社会一般の評価から、強制性交等罪についても厳罰化傾向は否めませんが、弁護士に依頼することにより、示談の成立が早ければ早いほど、被疑者に有利な処分がなされる可能性があります。
泉総合法律事務所は、刑事弁護の経験が豊富で、性犯罪事件の実績も多数あります。強制性交等罪を犯してしまった、逮捕されてしまったという人の家族の方は、当事務所に是非ご依頼ください。
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