交通事故

むち打ちで後遺障害と認定されるかどうかの判断のポイント

交通事故の後遺症が残ったとき、ある一定の条件を満たしていると証明できれば、その後遺症は、交通事故の損害賠償が認められる「後遺障害」として認定されます。

しかし、「むち打ち」による体の痛みやしびれなどの後遺症は、症状が他人から直接分からず、検査をしても原因が分かりにくいため、証明に必要な資料が手に入りにくく、認定を受けにくいという問題があります。

ここでは、むち打ちの後遺障害等級認定のためのポイントを分かりやすく説明します。
法律相談に行くかどうか決める際、相談前の準備のご参考になれば幸いです

1.事故の状況

端的に言うと、事故の衝撃が激しかった場合には認定されやすくなり、衝撃が軽い場合にはほとんど認定されません。

そもそも、事故の衝撃が、後遺症が残るような重症のむち打ちを引き起こすものだったのか自体が大きな争いになります。
スマホ・デジカメ・ドライブレコーダーなどで、事故の瞬間や現場の客観的な資料が残っていることが理想です。

写真や動画がなければ、「修理費用の見積もり書」が証拠になることもあります。
自動車のどこが壊れたかが分かれば、事故のときのスピード・衝撃の向きなどが分かるからです。

2.事故後の通院

(1) 事故直後の初診

事故があった日から1週間以内に、医療機関で交通事故によるむち打ちであると診断を受けることも重要です。
事故から時間が空いてからむち打ちと診断を受けても、審査機関は信用してくれないでしょう。

むち打ちの症状は、痛みやしびれ、頭痛、めまいです。しかし、これらはむち打ち以外の原因でも生じる症状がほとんどです。

1週間以上空くと、交通事故以外の原因で症状が出ているかもしれないと疑われ、因果関係が認められなくなってしまいます。

(2) 通院の頻度

むち打ちの症状は本人しかわからない自覚症状ですから、まずはできる限り客観的な事情で症状の重さを判断します。

具体的には、通院期間が6か月以上・通院頻度が週に2〜3回以上でなければ、むち打ちが後遺障害と認定されることは難しいです。

審査機関としては、「これだけ長い期間、頻繁に通院しているのであれば、ひどい症状があるのだろう」と考えています。
6か月も通院していない、あるいは、週に1回も通院していない方は、損害賠償をするほどの後遺症が残ってはいないとされてしまいます。

通院先が整形外科以外の医療機関や整骨院のときも「専門家である整形外科にかかっていないから症状は重くない」と考えられるおそれがあります。

【事故の時点で持病があったかどうかも重要】
事故の前からむち打ちの症状を起こすような持病(既往症)があった場合、症状の原因はその持病であり、交通事故ではないとされるおそれがあります。
このコラムの最後に説明する「後遺障害診断書」には、「既存障害」として「今回以前の精神・身体障害の有無」を記載するところがあります。医師が障害とは言えない些細な持病まで記入してしまうことがありますので、事前や事後に医師に確認をしましょう。

3.症状

交通事故の後遺症には、いくつかの特徴があります。むち打ちによる後遺症でも、そのような特徴が認められなければいけません。

しかし、むち打ちの症状は自分にしかわからない「自覚症状」がほとんどです。そのため、症状を医師に説明する際によく注意しなければ、医師は資料に正確な症状の内容を記録できません。

(1) 常時性

むち打ちによる痛みやしびれが、ほぼいつも感じられることが必要です。仕事帰りや寝起きに「だけ」症状がでるのでは、後遺障害と認定してもらえないのです。

一方で、むち打ちの症状は通常、ある程度「波」があります。「いつも」手のしびれがあるけど、重いものを持つときは「より」ひどくなる、といった具合です。この場合でも後遺障害の認定を受けることはできます。

しかし、医師に伝え方を間違えると、「重いものを持つとき『だけ』しびれが出る」などとカルテや診断書に記載されてしまいます。これでは認定に不利です。

医師に症状を伝えるときは、「いつも」症状があることを前提とするよう意識してください。

(2) 回復の傾向

むち打ちの症状が、事故直後からだんだんと回復している方は後遺症があると認定されやすくなります。

完全に回復し痛みがなくなったと思ってしばらくしたら、また痛みが現れた、という風に、事故後により悪化する、回復と悪化を繰り返す方は認定が難しいでしょう。

ここでも、むち打ちの症状の波の伝え方を間違えると、「回復と悪化」を繰り返しているとされてしまいます。

「前の診療から今回の診療までの間を通しての症状の様子」を説明してください。「医師の目の前にいるときの症状」をそのまま口に出してはいけません。

(3) 症状のある場所や内容の一貫性

原因となる交通事故が一つなのですから、その結果として生じたむち打ちの症状も一つでなければいけません。

症状のある体の部位や症状の内容が変わらない「一貫性」も、むち打ちなど交通事故による後遺障害の特徴です。

ある時は首だけがいたい、ある時は手だけがしびれるというのでは、認定を受けにくくなります。
初診のときから、全ての症状をはっきりと医師に伝えましょう。

他の事情とかみ合っていない不自然な症状なら、事故以外の原因で症状が引き起こされているのではないかと疑われてしまうでしょう。

また、整骨院へは、医師の指示があった場合にのみ行き、医師から診断を受けたところと全く同じところだけを施術してもらいましょう。

4.検査内容と結果

検査結果は、客観的に怪我や症状を証明することができるとても大切な資料です。

ところが、むち打ちに関しては、2019年現在の医学をもってしても、どの検査でも直接に体のキズや症状を証明することは難しくなっています。

それでも、何らかの体の異常が検査で発見され、その異常が交通事故によるむち打ちの後遺症の特徴を明らかにするものであれば(たとえば異常内容が変わらず、だんだんと回復しているなど)、非常に有力な証拠になります。

どのような検査をするにせよ、基本的に、できる限り早くに検査をすること・定期的に検査をすることが大切です。

特に、画像検査は早さが勝負です。撮影が遅くなると体のキズが画像に写りにくくなります。
検査を定期的に行って異常を確認し続けていれば、損傷や症状、身体の異常が継続していて、後遺症が残り続けていると言いやすくなります。

(1) 画像検査

むち打ちは主に画像検査で確認できない神経の損傷が原因ですが、精密MRI検査により異常がわかることがあります。

椎間板(骨と骨の間のクッションのようなもの)などに異常があり、神経の束である「脊髄」などに圧迫を加えているとわかることがあります。
特に、自覚症状や他の検査結果とうまく噛み合っていれば、後遺症の賠償金の金額が一気に増えることもあります。

(2) 神経学的検査

神経学的検査とは、神経が感覚や動作をコントロールしている部分の体に刺激を与えてその反応を見ることで、神経に異常がないか確認する検査です。
検査の種類が多く、ものによっては審査期間が信頼してくれないものもあります。

様々な検査をしていること、特に、腱反射検査・筋萎縮検査など、比較的信頼性の高い検査をしていて、異常が継続的に検出されているのであれば、認定に有利になります。

5.後遺障害診断書の内容

後遺障害診断書とは、認定手続のために後遺症についてまとめた特別な診断書です。

後遺障害等級認定手続は「書面審査」。つまり書類だけで認定条件をクリアしているかが判断されます。カルテや診断書、検査結果などが全てです。

その中でも、後遺障害診断書は最も重要視される絶対に間違いがあってはならない資料です。

後遺障害診断書の記載欄には、通院期間・既存障害・自覚症状など、後遺障害の認定条件の判断に大きな影響を与える項目が並んでいます。

さらに、診断書の最後には、症状が将来治るか、つまり後遺症が残っているといえるのかについて結論を記載する「障害内容の増悪・緩解の見通し」という記載欄すらあります。
ここに「将来治るでしょう」などと書かれたら、認定は絶望的です。

作成後の修正は難しいので、後遺障害診断書の作成を依頼する前に弁護士に相談して助言を受けるようにしてください。

6.後遺障害の認定は弁護士にご相談を

むち打ちの後遺障害の認定は、一般の方が思っているよりもハードルが高いものです。後遺症について賠償を受けるには、ここで説明したポイントを証明できるような資料を残せるよう、適切な行動が必要になります。

とはいえ、後遺障害等級認定手続は法律的な専門手続です。法律の専門家である弁護士の助言がなければ、認定条件に沿ったより良い証拠を集めることは難しいでしょう。

また、治療が終わってしまった段階で、後遺障害等級認定を申請すべきかどうかの判断をするうえでも、弁護士のサポートは重要です。後遺障害診断書の作成にもお金がかかります。認定の可能性がどれほどあるのかの見通しを弁護士に立ててもらいましょう。

泉総合法律事務所は、これまで交通事故でむち打ちになってしまった方の後遺障害等級認定の申請や損害賠償請求をお助けしてまいりました。皆様のご相談をお待ちしております。

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