債務整理

自己破産はいくらからできる?その基準と適切なタイミング

自己破産を考える最良のタイミングとは?

現在借金でお悩みの方の中には、「返済が苦しくなってきたが、自己破産をした方がよいのだろうか?」、「自己破産は最後の手段と聞いたことがあるが、この借金額で自己破産はできるのだろうか?」と考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

自己破産という制度があることは知っていても、自分が自己破産をした方がよい状況なのか、どのタイミングで自己破産をすべきなのかといったことが分からないと、自己破産に向けた具体的な検討がしにくいと思われます。

そこで、この記事では、借金がいくらなら自己破産を考えるべきなのかと、自己破産を考えるタイミングについて解説します。

1.自己破産は借金がいくらからできる?

(1) 自己破産と借金の金額は関係がない

結論から言えば、「借金がいくらからなら自己破産することができる」といった法律上の規定はありません。

一般論で言えば、年収3億円の人が総額100万円の借金を抱えたからといって自己破産はできないでしょうし、一方で、年収100万円の人なら50万円の借金でも自己破産できる可能性はあります。

このように、借金額と自己破産にはあまり関係がありません。その代わり、「支払不能」という状態が自己破産する際の基準となっています。

(2) 「支払不能」とは

支払不能とは、「債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態」(破産法2条11項)です。

「支払能力を欠く」

借主に、借金を返済する経済力がないことを指します。借金を返済すべき財源も収入も資金調達力も何もない状態です。
たとえ債務者に財産があっても換価できなければ「支払不能」の要件に該当します。

また、返済すべき借金は、返済期限が来ているもの(債務のうち弁済期にあるもの)に限ります。

「一般的かつ継続的に」

借金を一部の債権者に返済できても、すべての債権者に返済できなければ「支払不能」の要件を満たします。

また、「継続的に」返済できないことが「支払不能」の要件です。
たまたま今月は返せないけれど、来月に入れば返すことができるのであれば、「支払不能」の要件に合致しません。

「客観的」

「支払不能」の状態は、客観的に判断されます。「自分は返済できる・できない」といった債務者の意思に関わらず判断されることになります。

「支払不能」の状態を客観的に判断するのは難しいので、「支払停止」という行為があった場合は、「支払不能」が推定されることになります(破産法15条2項)。

「支払停止」

「支払停止」とは、「債務者が資力欠乏のため債務の支払をすることができないと考えてその旨を明示的又は黙示的に外部に表示する行為」(最高裁判所昭和60年2月14日判決)です。

自己破産に限らず債務整理をする際に、弁護士が債権者に送付する受任通知がこの「支払停止」に該当するとした判例があります(最高裁判所平成24年10月19日判決)。

当然、自己破産する際も、弁護士に依頼すると、債権者に対して受任通知が送付されるので、「支払不能」は推定されることになります。

2.自己破産を考えるタイミング

次に、自己破産を考えるべきタイミングについて、具体例を挙げて解説します。

(1) 借金の元本が全く減らない状態に陥った

多額の借金があり、「借金を返しても、返しても、利息の支払いに充てられるだけで、元本が一向に減らない……」という状態に陥ってしまった時が、自己破産を検討するタイミングです。

借金を返すために他から借金をして返す、といった自転車操業が始まった場合も同様です。
元本が減らないのであれば、いつまで経っても借金額は減らず、増えていく一方ですから、生活を立て直すことは難しいでしょう。

そのような状態から抜け出すには、自己破産をして借金を全部なくすのが一番です。

(2) リストラや病気で収入がなくなり返済ができなくなった

それまでは返済を続けてきたけれど、リストラにあったり、病気で働けなくなったりと、収入が途絶えて返済ができなくなったタイミングでも自己破産を検討すべきです。

収入がゼロになった場合は、任意整理や個人再生は不可能なので、自己破産が唯一の解決方法となります。

もっとも、自己破産の申立てに向けた準備をしている間に、次の就職先が見つかったり、体調がよくなって働けるようになったりすれば、任意整理や個人再生といった方法を選択できる可能性も出てきます。

(3) 生活保護の受給をしたい

生活保護を受給して、その生活保護費で借金の返済をすべきではありません。なぜなら、生活保護費は、最低限の生活を保障するために支給されるものなので、それを借金の返済に充ててしまうと、最低限の生活も維持できなくなってしまうからです。

また、生活保護費を借金の返済に充てることは、生活保護制度の趣旨にも反します。

生活保護を打ち切られてしまうリスクもありますから、その意味でも、生活保護費で借金の返済をすべきではありません。

本来は生活保護受給を開始する前に、自己破産により借金問題を解決するのがベストです。

しかし、生活保護受給者であれば、自己破産時に法テラスの利用が可能で、法テラスに立て替えてもらった費用につき免除を受けることもできます。
また、生活保護受給者は、自己破産をする際に支払わなければならない予納金も免除されます。

経済的に苦しく予納金や弁護士費用もままならないといった場合は、生活保護を受けてからのタイミングで自己破産するといいでしょう。

(4) 退職金がある場合は、できるだけ早めのタイミング

自己破産をする場合、退職金は、資産として処分の対象となります。

すでに退職金を受け取っている場合はもちろん、退職していない場合や、すでに退職しているけれどもまだ退職金を受け取っていない場合も、処分対象となります。

退職金がある人の自己破産では、①当面退職する予定がない場合、②退職間近の場合、③すでに退職金を受領している場合で、破産財団として債権者に分配される退職金の額が大きく変わってきます。

①当面退職する予定がない場合

退職金支給見込額の8分の1が資産として評価されます。

②退職間近の場合

退職金支給見込額の4分の1が資産として評価されます。

③すでに退職金を受領している場合

全額資産として評価されます(ただし、他の財産と合わせて99万円までは自由財産として残すことが可能です)。

できるだけ早く①のタイミングで自己破産できるようにしましょう。

自己破産を考えている方へ|退職金について弁護士が詳しく解説

[参考記事]

自己破産によって退職金がどうなるかを弁護士が詳しく解説

4.自己破産をご検討中なら弁護士へ

自己破産を考えるべき借金額の基準と自己破産するタイミングについて、大まかなイメージは掴んでいただけましたでしょうか。

借金問題についてお悩みで、自己破産やその他の債務整理をすることをお考えの方がいましたら、ぜひ一度泉総合法律事務所にご相談ください。
当事務所では、自己破産をはじめとする債務整理のご相談を多数お受けしておりますので、経験豊富な弁護士がお客様のご状況に合った最適な解決方法をご提案いたします。

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