ガチャによる借金を個人再生手続で解決
通勤会社や休み時間の合間にできるスマホのソシャゲは、現代に生きる人々の大事なストレス解消源の一つとなっています。
そのソシャゲの「ガチャにのめりこんで、気づけば大枚をはたいてしまっていた」という悲劇は、珍しいものではありません。
自己破産をすれば、例えガチャの課金による借金であろうと、しっかりと反省の意を示し、課金から足を洗うことで大抵の債務は免除してもらえます。
しかし、自己破産をすると、価値のある財産やマイホームを手放すことになります。家庭を持つサラリーマンの場合、これはかなりのデメリットでしょう。
マイホームなどの財産を維持しつつ借金を大幅に減らせる債務整理手続として、借金の一部を原則3年(最長5年)で返済する「個人再生」があります。
このコラムでは、住宅ローンの残るマイホームを維持しつつ、ガチャによる借金を減額できる「個人再生」について説明します。
このコラムの目次
1.個人再生の再生計画の認可条件
個人再生では、「再生計画」に基づいた借金返済計画を3年(例外5年)で完遂した後は、残りの借金の返済義務は免除されます。
すなわち、個人再生は、例えば債務総額が500万円から1000万円の場合には、債務総額の1/5までに圧縮した借金を計画的に支払い終えることにより、残りの4/5の借金の返済を免除してもらえるのです。正確な圧縮額、免除額はこの後の2の「(1)最低弁差額」をご確認ください。
再生計画の履行のための継続的な収入を得ていなければなりませんが、「住宅ローン特則(住宅資金特別条項)」を利用することができれば、ローン支払い中のマイホームを手元に残すことができます。
しかし、この「再生計画」は、裁判所の認可が必要です。再生計画に基づく返済を完遂できる履行可能性がなければ、裁判所は再生計画を認可しません。
[参考記事]
個人再生における履行テストとは?
再生計画の途中で挫折すれば、残る借金が一括請求され、たいていは自己破産することになるでしょう。
また、個人再生手続での重要な原則に違反する違法行為をすると、再生計画が認可されない恐れがあります。
例えば、財産を隠す、特定の債権者にだけ優先的に返済する(偏頗弁済)などの行為は、債権者を害する重大な違法行為ですので、悪質ならば再生計画が認可されない原因になります。
2.再生計画による借金の返済額
再生計画上の返済総額は、以下の基準額のうち一番高い金額になります。
ここでは、一般的に用いられる個人再生手続の種類である、「小規模個人再生」における2つの基準を紹介します。
(1) 最低弁済額
法律が借金総額に応じて定めている返済額で、一応の目安としては借金総額の5分の1です。
- 債務総額100万円未満:減額なし
- 100万円以上~500万円未満: 100万円
- 500万円以上~1,500万円未満:債務総額の5分の1
- 1,500万円以上~3,000万円未満:300万円
- 3,000万円以上~5,000万円:債務総額の10分の1
(2) 清算価値
債務者が自己破産をした場合、債権者に配当されると見込まれる債務者の財産相当額です。
個人再生手続では、財産の配当手続がない代わりに、配当見込額以上を返済する必要があります。これを「清算価値保障の原則」と言います。
清算価値に含まれる財産は、99万円を超えた部分の現金、預貯金全額、生命保険や学資保険の解約返戻金全額、退職金見込額の8分の1などです。
なお、各地の裁判所により、細かく運用が異なりますので、詳細は弁護士に確認してください。
3.個人再生のメリット
(1) 免責不許可事由がない
免責不許可事由とは、自己破産手続において、原則として借金が免除されなくなる事情のことです。
しばしば、「ガチャやギャンブルなどによる借金では自己破産しても借金が免除されない」と言われる原因は、そのような行為が免責不許可事由に該当するからです。
もっとも、実務上は「裁量免責」という制度により、ほとんどの場合は自己破産をして、借金をゼロにすることができます。
ただし、その様態が悪質な場合や、手続にちゃんと協力しない場合には、本当に借金が免除されないことはありえます。
[参考記事]
自己破産で破産管財人に聞かれる内容への対応方法
個人再生手続では、免責不許可事由のような規定はありません。
ガチャやギャンブルによる借金だからというだけで、手続が利用できなくなるリスクは生じないのです。
(2) 住宅ローンの抵当権がついているマイホームを手放さないで済む
個人再生手続は、一定の条件を満たせば、住宅資金特別条項を利用できます。
住宅ローン債権者などにマイホームを処分されないように手続きを進められるので、持ち家がある債務者にとっては大変ありがたい制度です。
[参考記事]
自己破産でマイホームを任意売却するタイミング
(3) 財産が裁判所により処分されない
自己破産手続では、ほとんどの財産が、債権者への配当のため裁判所により処分されてしまいます。
個人再生手続では、どんなに高額の財産であっても、裁判所が財産を処分することはありません。
なお、債権者が担保に取っている財産(ローン返済中の車など)は、債権者の手で処分されてしまうことにはご注意ください。
(住宅資金特別条項を利用できる場合のマイホームを除く)
(4) 資格制限がない
自己破産手続中は、警備員や生命保険の募集人、そのほか金融関係の資格など、他人の財産を預かる資格や職業で働けません。
個人再生手続では、資格制限は一切ありませんから、働けなくなることを心配することはご無用です。
[参考記事]
自己破産と個人再生|それぞれのメリット・デメリットの違い
4.携帯(スマホ)の解約について
最後に、スマホが生活必需品になっている私たちが注意すべきは、「通信料の滞納がある場合」または「スマホ本体の割賦払いが残っている場合」に個人再生手続をすると、スマホが解約されてしまう可能性があるということです。
(通信料の滞納がなく、また、スマホ本来の支払いも終わっている場合は、問題になりません。)
これを回避するには、個人再生手続き開始の前に滞納を解除しておいたり、スマホ本体の代金を一括払いしておいたりする必要があります。
しかし、本人がそれらを支払うと、特定の債権者にだけ優先的に返済する「偏頗弁済」になってしまうため、親族に肩代わりして支払ってもらい、解約を回避することが一般的です。
解約されると、従来の携帯会社(キャリア)とは半永久的に契約できなくなります。また、「ブラックリスト」への登録により、他の携帯会社でも5〜10年は新規の契約(分割払いによる本体購入)ができなくなります。
ただし、本体の一括払いなら購入が可能ですし、通信料金を先払いするプリペイド携帯は契約可能な場合がありますので、弁護士に確認して見ると良いでしょう。
5.個人再生による借金の整理は弁護士に相談を
僅かな空き時間で手軽に遊べるスマホゲーム(ソシャゲ)は、社会人にとって非常に身近な娯楽となりました。
しかし、ガチャやアイテム課金により、支払いきれない出費を重ねてしまうことも多くなっています。
後悔していても始まりません。素人知識で安易な誤魔化しをしようとせず、借金に困っているならばすぐに専門家へ相談しましょう。
泉総合法律事務所では、個人再生により借金問題を解決した実績が多数ございます。是非ともお気軽にご相談ください。
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