税金・保険料・年金を滞納していると個人再生に失敗するって本当?
個人再生は、裁判所に申立をすることで借金を減額してもらえる制度で、申立が認可されれば銀行、消費者金融、クレジット会社などの借金を合法的に整理することができます。
しかし、税金、保険料、年金などは、銀行や貸金業者の借金とは性質が異なります。
結論から言えば、税金や保険料、年金といった公租公課は、個人再生の影響は一切受けません。つまり、個人再生の手続後も一切減額がされず、納税の義務は残るのです。
また、個人再生の前に公租公課の滞納処分(財産の差し押さえなど)があると、個人再生が失敗することもあります。
ここでは、個人再生の際の滞納している税金・保険料・年金の取り扱いについて、詳しく解説します。
このコラムの目次
1.個人再生における税金、保険料、年金の扱い
個人再生において、債務(借金)はどのようなものでも減額してもらえるわけではありません。
個人再生の債務には種類があり、場合によっては減額対象にならない債権もあるのです。
税金、保険料、年金などの公租公課は「一般優先債権」という種類に該当し、個人再生をしても減額対象とはなりません。
また、公租公課は種類によっても優先順位があり、国税>地方税>保険料の順番で支払いをする必要があります。
- 国税:所得税・法人税・贈与税・相続税
- 地方税:道府県民税・法人道府県民税・事業税・自動車税・固定資産税など
また、民事再生法122条によると「一般優先債権は再生手続きに関係なく随時弁済すること」が明記されており、申立の有無に関わらずできるだけ早く返済しなければなりません。
個人再生では特定の債権者だけ優先的に弁済する「偏頗弁済」は禁じられており、抵触すると再生計画が認可されない可能性がありますが、一般優先債権の弁済についてはこれに該当しません。
よって、個人再生開始決定の後に、滞納している税金や保険料を納めても何の問題もないのです。
2.税金滞納を続けた場合のリスク
(1) 強制執行(差し押さえ)
税金や保険料を支払えない場合、行政機関は滞納処分として差し押さえ(強制執行)をすることができます。
ローンやキャッシングなどの借金の場合、自力救済禁止の原則があるので、取り立てのために勝手に差し押さえをすることはできません。もし、滞納が続いていて強制執行を行いたい場合は、裁判所に申し立てをして強制執行命令を出してもらう必要があります。
しかし、公租公課の場合はその必要はありません。これらの滞納があった場合は、行政機関は裁判所に申し立てることなく「自力執行権」により独自に強制執行することが可能です。
また、滞納している間に、延滞金はどんどん膨れ上がるので注意が必要です。
(2) 滞納処分で個人再生不認可の可能性
実は、個人再生の前に滞納処分を受けると、個人再生が不認可になる可能性があります。
なぜなら、自分の財産が差し押さえを受け、生活基盤が脅かされる(滞納処分)状態では、再生計画の履行は困難であると裁判所に判断されてしまうからです。
個人再生認可の条件には、再生計画の履行の見込みがあることが要件となっており、履行が危ぶまれる要素はできるだけ取り除く必要があります。
仮に滞納処分を免れても、税金や保険料は個人再生後も支払いを続ければならなりません。滞納の状態が続いているのならば、個人再生に影響を与える可能性があります。
税金滞納は、以下のような方法で申立前に問題解決するのがベストです。
3.公租公課の滞納を解決する方法
公租公課を支払えないときには、税金や保険料について、それぞれの事情に応じて減免、分納、猶予の制度があります。
また、年金についても、免除、猶予の措置をとってもらえます。
(1) 税金
①分納
所得税、住民税、固定資産税などの税金を滞納した場合、本来であれば一括で納めなければなりませんが、事情があって払えない場合は、1年を超えない期間で分納することが認められます。
分納の期間は3~6ヶ月になるのが一般的で、分納中は延滞税も軽減されるので支払いも楽になります。
税金の分納は当然認められる権利ではないので、税務署や市役所の窓口で相談をするときには、理解を得られるように事情をしっかりと説明しましょう。
②換価の猶予
また、税金を期日までに納めないと基本的に滞納処分を受けますが、事情がある場合には、税務署に相談すれば差し押さえの猶予をもらうことができます。
これを換価の猶予と言い、差し押さえすることで事業継続ができなくなったり、生活ができなくなったりするような事態になる場合に認められます。
③納税の猶予
税金の猶予には納税の猶予もあります。これは、災害、病気、リストラ、倒産などで税金が払えなくなったときに、1年間を限度に納税を猶予するというものです。
換価の猶予、納税の猶予を認められるためには様々な条件がありますが、いずれも税金を支払う意思があり、誠実な対応をしていることが前提となります。
よって、換価の猶予を貰うときは、税金逃れではなく、本当にお金に困っていて、いずれは払うという誠意を示すことが大事です。
差し押さえするほどの財産がない場合、または差し押さえすると生活が著しく困窮する場合、本人の所在が分からない場合は「滞納処分の停止」となり、その状態が3年続けば滞納処分の執行が停止され、支払い義務はなくなります。
(2) 保険料
災害や失業などで一時的に生活が困窮した世帯に対して、保険料を減免する制度があり、世帯を調査して妥当であると判断されれば減免してもらうことができます。
減免を受けるには、原則として納付期限前に申請しなければなりません。
保険料の軽減、減免については、お早めに市役所の窓口で相談することをおすすめします。
(3) 年金
前年所得が一定額以下、または失業により収入が激減したなど、国民年金保険料を納めるのが難しいときは、納付が免除されます。
ただし、免除期間については、受給額が1/2(平成21年度までの分は1/3)になります。
また、20歳~50歳以下の人については、前年所得が一定額以下の場合は納付猶予制度もあります。
免除、猶予を希望する場合は市役所の年金窓口に相談をしましょう。
年金は、所得が低ければこの先の納付については免除される可能性があるので、お早めに免除手続きの相談をすることをおすすめします。
4.個人再生をご検討の方は泉総合法律事務所へ
税金、保険料、年金の滞納分については、個人再生をしても減免されることはなく、そのまま放置していると差し押さえされる可能性があります。
そうならないために、できるだけ早く税務署や市役所の窓口に相談をしましょう。
支払う意思はあるけれど個人再生をするほど困っている事情を話せば、分納、減免などの措置をとってもらえる可能性があります。
また、滞納を放置していたり、滞納処分になっていたりする場合、個人再生すると不認可になる可能性が高いので、公租公課の滞納については申立の前に決着をつける必要があります。
個人再生の申立のタイミングは、収入が十分あり、再生計画の遂行と税金の分納が両立できる場合は、分納協議のまとまった段階でOKです。
もし収入が不十分で、税金を払うと再生計画の遂行ができなくなる場合は、分納が終わった後にしましょう。
税金等の公租公課が、他の借金があり払えない場合は、泉総合法律事務所にご相談ください。他の借金を個人再生で減額することにより、浮いたお金を税金等の支払いに充てられる可能性があります。
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