債権譲渡により借金の返済先の変更があったときの過払い金返還請求
借金を返済している最中に、「借金の返済先が変更されました」との連絡がきたことはありませんか?
また、返済先業者が倒産して、新しい業者に借金を返済するよう要求されたことがある方もいるかもしれません。
これは貸金業者の間で、「債権譲渡」がされたために生じることです。
では、債権譲渡がされていた場合に、過払い金の返還請求はどうなるのでしょうか。
このコラムの目次
1.債権譲渡と過払い金の基本
まずは過払い金の基本を簡単に説明します。
(1) 過払い金の基本
借金の利息には、法律で上限が定められています。ところが、以前は、利息制限法と出資法という法律の間で、利息の上限が異なっていたために、合法なのか違法なのかはっきりしない「グレーゾーン金利」が発生していました。
貸金業者のほとんどは、利息制限法の上限金利よりも高く、出資法の上限金利よりも低いグレーゾーン金利で利息を取り立てていました。
しかし、2006年、最高裁判所は、利息制限法の上限金利を超えるグレーゾーン金利は違法であると判断したため、それに基づいて支払った利息、つまり、過払い金を返還するよう、貸金業者に要求することができるようになったのです。
この過払い金返還請求権が、債権譲渡によりどのような影響を受けるのかを考えるために、つぎに債権譲渡とは何かを簡単に説明します。
(2) 債権譲渡とは
「債権」とは、ありていに言ってしまえば、「お金を支払ってもらえる権利」です。
その債権を「譲渡」、要するに、「他人に売り渡す」わけですから、「債権譲渡」とは、ある人からお金を支払ってもらえる人が、他の第三者からお金を受け取り、その第三者が代わりに支払いを要求できるようになることと言えます。
貸金業者間の債権譲渡に関して言えば、「貸金業者が、他の貸金業者などに、借主から借金の返済をしてもらえる権利を譲渡・売却したこと」を意味します。
貸金業者間の債権譲渡は、しばしば貸金業者が経営状況の悪化や倒産などの事情により、金銭的に窮乏した場合に、他の貸金業者から現金を手に入れる目的で行われています。
特に過払い金返還請求権が非常に多くされたことで、多数の貸金業者の経営が圧迫されているため、債権譲渡は珍しくなくなっているのです。
さて、次から本題に入ります。
債権譲渡があると、過払い金の請求はどうなるのでしょうか。
2.債権譲渡があった場合に過払い金はどうなる?
(1) 過払い金の請求先について
債権譲渡がされていたとしても、債権を譲渡した側と譲渡された側の貸金業者がいずれも倒産していなければ、別々に過払い金を請求すれば良いだけの話です。
しかし、債権譲渡をするような貸金業者の中には、資金繰りに行き詰ってしまった業者が少なくありませんから、譲渡した側の貸金業者は、過払い金返還請求をしようとしたときには、すでに倒産してしまっている恐れがあります。
倒産した貸金業者には、一般的には元の過払い金の数パーセントしか請求出来ません。
そこで、債権を譲り受けた新しい貸金業者に対して、借金の返済を受けとる権利を手に入れたのだから、従来までの取引で生じた過払い金を支払う義務も受け継いだとして、過払い金の全額を請求できないかが問題となるのです。
(2) 債権譲渡と「契約上の地位の移転」
もう少し、専門的な解説を加えれば、債権譲渡に伴い、「契約上の地位の移転」も生じたといえないかが重要です。
借金を受け取る「権利」だけではなく、過払い金の返還をする「義務」など、もろもろの法律関係の基礎となる、借金に関する契約をした貸主としての「地位」そのものが譲渡されたといえれば、債権譲渡を受けた新しい貸金業者に過払い金の全額を返還請求できるといえるようになります。
たとえば、契約の「切り替え」(いわゆるおまとめローンのように、いったん別の業者が借金残高を全部支払って、その支払ってくれた業者に返済先を変えるもの)がされた場合には、最高裁判所は、契約者の地位の移転を認めています。
と、ここまで期待を煽っておきながら申し訳ないのですが、残念ながら、債権譲渡の場合には、最高裁判所は、契約者の地位の移転を原則として否定しています。
貸金業者の間でされた債権譲渡に関する契約の中で、契約者の地位の移転をすることまで約束されたといえる具体的な事情がなければ、債権譲渡がされても、契約者の地位までも移転したとは言えないというのです。
そのため、一般的には、債権譲渡があった場合には、以前の貸金業者への過払い金を、新しい貸金業者に請求することは出来なくなってしまっています。
これを踏まえたうえで、債権譲渡があった場合の過払い金請求の方法について確認します。
3.債権譲渡後の過払い金請求の方法や注意点
(1) 両社とも存続している場合
先ほど簡単に触れた通り、債権を譲渡した側も譲渡された側も、倒産せず会社として存続している場合には、普通に別個に過払い金を返還請求すればよいだけです。
ただし、一つ注意点があります。
債権譲渡をした貸金業者は、資金繰りが悪化し、倒産の危機に瀕している可能性があります。
倒産されてしまえば、変換できるような過払い金はありません。迅速に請求をする必要があります。
もっとも、資金繰りが悪化していれば、そうやすやすと過払い金を返してくれるわけもありません。
交渉段階ではかなり低額の和解額を提示し、裁判となれば、あらゆる引き延ばし策をはじめ、徹底抗戦に出るでしょう。
裁判をしている間に倒産されてしまっては元も子もありませんから、かなり低い和解金額であっても、裁判にせずに妥協せざるを得ないかもしれません。
債権譲渡をしたからと言って、必ずしも経営状況に問題があるとも言い切れませんから、まずは弁護士に相談し、請求の時点での相手方の状況を見極めてもらいましょう。
(2) 債権譲渡をした会社が倒産済みの場合
この場合、先ほど説明したとおり、原則としては、債権譲渡をした業者に対して生じている過払い金を、譲渡をされた新しい貸金業者に請求することは出来ません。
もっとも、譲渡後も利息を支払いすぎて返済し続けていれば、当然、新しい業者にその分の過払い金の返還請求は可能です。
倒産した貸金業者に対しても、元の過払い金が大きければ、数パーセントでも費用倒れにならずに済む可能性がありますから、念のため弁護士に確認してもらいましょう。
4.過払い金返還請求は弁護士に相談を
これまで説明した通り、債権譲渡があった場合には、以前の貸金業者に払いすぎた利息を債権を譲りうけた貸金業者に請求することはできません。
貸金業者間の契約次第ですが、一般的には、新しい貸金業者に、元の貸金業者への返済で生じた過払い金の返還請求をすることは難しいでしょう。
しかし、債権譲渡後にも利息を支払いすぎていれば、新しい貸金業者に過払い金を返還請求することは全く問題がありません。
もとより、過払い金返還請求は、世間のCMで一般の目につくようになったとはいえ、専門的な法律問題であることに変わりはありません。
まして、債権譲渡があった場合には、貸金業者の間の契約の解釈などについて、法律の専門家である弁護士が積極的に貸金業者と闘わなければ、十分な成果を上げることはできないでしょう。
泉総合法律事務所は、これまで多数の過払い金返還請求について、任意交渉及び裁判双方の豊富な取扱い経験があります。
相談も無料となっておりますので、町田市、相模原市、横浜線・小田急線沿線にお住まい、お勤めの方は、是非、お気軽にご相談ください。
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